Adobe Firefly2025解説: 新機能と今後の展望

Adobe Firefly2025解説: 新機能と今後の展望
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Adobe Fireflyとは?

Adobe Firefly(ファイヤーフライ)とは、Adobe社が提供するクリエイター向けの生成AIプラットフォームです。画像やベクターイラスト、デザインテンプレート、動画など様々なコンテンツをAIで生成・編集でき、PhotoshopやIllustratorといったCreative Cloudアプリとも密接に統合されています)。2023年3月に初公開されて以来、ユーザーのクリエイティブ作業を支援する「AI搭載コパイロット」として進化を続けており、新しいツールや機能が次々と追加されています。

Firefly最大の特長は商用利用の安全性です。他の生成AIサービスと異なり、Adobe FireflyはAdobe Stockのライセンス素材や著作権が消滅したパブリックドメインの画像のみを学習データとして使用しています。そのため、生成される画像や映像は著作権上のリスクが低く、企業やプロのクリエイターでも安心して作品に使用できます。実際、AdobeはFireflyで生成したコンテンツは商用利用が可能であると明言しています。この「知的財産権に配慮した」安全な設計により、Fireflyは専門家からも注目を集めているのです。

2025年2月の大型アップデートと新機能

Firefly Webアプリのホーム画面。2025年2月のアップデートにより「テキストから動画」「シーンから画像」「動画を翻訳」「画像から動画」「音声を翻訳」といった新機能が追加されている

2025年2月、Adobe Fireflyに初の大型アップデートが実施され、多数の新機能が追加されました。このアップデートにより、Fireflyは画像生成だけでなく動画や音声の分野にも対応する総合的な生成AIツールへと進化しています。以下に、今回のアップデートで利用可能になった主要な機能を簡潔に紹介します。

Adobe Firefly WEBアプリサイト

Fireflyの機能解説

画像生成機能

  • テキストから画像生成: テキストによる指示(プロンプト)から高品質な静止画を生成する機能です。写真風のリアルな描写からイラスト調のスタイルまで、プロンプトとスタイル設定に応じて多彩なビジュアルを作り出せます。独自の調整オプションを備え、光源やカメラアングルの指定、参照画像によるスタイルの統一など細かなコントロールも可能です 。
  • シーンから画像生成(Beta): 簡易的な3Dシーンやスケッチを元にして、その構図に沿った画像を生成する実験的機能です。ユーザーはFirefly上の軽量な3Dデザインツールで大まかなオブジェクト配置や形状を指定でき、それをガイドとして高解像度の画像を得ることができます。これにより、思い通りのレイアウトやパース(遠近感)を持った画像を素早く作成でき、デザインの下絵から最終イメージまで一貫して生成AIに任せることも可能になりました。
  • 生成塗りつぶし: 画像内の選択範囲を自然に補完・置換する機能です。Photoshopに搭載された「Generative Fill(生成塗りつぶし)」として提供され、選択した領域に対しテキストで要望を指示すると、その指示に沿ったコンテンツで領域を満たします。不要物の除去や背景の描き足しなど、従来は手作業が必要だった画像編集が数秒で完了します。
  • 生成拡張: 画像や映像のフレームを拡張する機能です。Photoshopでは「Generative Expand(生成拡張)」機能としてキャンバス外に存在しない部分をAIで描き足すことが可能で 、例えば写真の構図を変更する際のトリミング後に不足した背景を自動生成できます)。また動画においても、Premiere Proの機能として数秒分の映像をAIで追加生成することが可能になりました。
  • テキスト効果: テキスト文字に質感やエフェクトを適用し、ユニークな文字デザインを生成する機能です。Fireflyの初期から提供されている機能の一つで、Adobe Express上で「Text Effects」として利用できます。文字入力と効果の指示を与えるだけで、まるで写真から切り抜いたような質感の文字やアート風タイポグラフィを自動作成できます。
  • テンプレート生成: デザインテンプレート(チラシやソーシャルメディア投稿用画像など)をテキスト指示から自動作成する機能です。Adobe Expressに統合された「Text to Template」として利用でき、レイアウトやグラフィック要素が整った複数パターンのデザイン案が瞬時に生成されます。FireflyのDesignモデルによって実現した機能で、デザイナーが一からレイアウトを考案する手間を省いてくれます。

動画生成機能

  • テキストから動画生成: テキストプロンプトを入力するだけで短い動画クリップを生成できる新機能です(ベータ版)。1080p解像度・24fpsで最大5秒間の映像を作成でき、横長(16:9)だけでなく縦長(9:16)の動画にも対応しています。シンプルな文章からシーンを自動で描写するだけでなく、後述のようにカメラ視点や動きの細かな指定も可能で、プロの動画編集素材として活用できる品質です。
  • 画像から動画生成: 1枚の画像を入力し、その静止画を動きのある映像クリップに発展させる機能です。例えば風景写真を与えると、水面や雲が動く短い動画に変換できます。またテキストと組み合わせて、指定したシーンの開始フレーム・終了フレーム(静止画)間を補完するアニメーションを生成することも可能です。静止画では表現しきれない躍動感を、ワンクリックで付加できるのが魅力です。
  • 動画翻訳: 動画ファイル内の話者のセリフを他言語に翻訳し、吹き替え音声付きの新しい動画を生成する機能です。Fireflyに動画をアップロードすると、自動的に字幕を書き起こし、それを指定した言語に翻訳して、元の声のトーンや話し方を維持した合成音声で吹き替えてくれます)。現在は最大10分の動画に対応し、翻訳可能な言語は20種類以上(言語の自動検出や複数言語への同時翻訳も可能)とされています。

ベクター画像

  • 生成再配色: 既存のベクターアートの配色を、テキスト指示に基づき一括で変更する機能です。Illustratorの「Generative Recolor(生成再配色)」として2023年にベータ提供が始まり、例えば「秋の雰囲気」と指示すると秋色のカラーパレットに自動で置き換えるといったことができます。デザインのバリエーション出しやダークモード対応などに威力を発揮し、従来は手間だった色替え作業を数秒で完了できるようになりました。
  • ベクター生成: イラストレーター向けの機能で、テキスト指示からベクター画像(SVG形式のイラスト)を生成します。世界初の商用向けベクター生成AIモデルと称される「Firefly Vector Model」によって実装されており、Adobe Illustratorの「テキストからベクターグラフィック」機能として提供されます。ロゴやアイコン、イラスト素材など解像度に依存しないグラフィックを簡単に作れるため、デザイン業務の効率化に寄与します。

Fireflyの動画生成機能の進化

Fireflyにおける動画生成機能の登場は、クリエイターの映像制作ワークフローに大きな変革をもたらしました。テキストプロンプトを入力すれば、その説明に沿った短いビデオクリップをAIが自動で生成します。例えば「夕暮れの海辺に波が打ち寄せる静かな映像」と指示すれば、波が寄せては返す5秒ほどの動画が得られるイメージです。さらに静止画一枚を入力素材として、そこに動きを付けることもできます。Firefly Video Model(動画生成AIモデル)はいわば仮想の「AIカメラ」と「AIレンズ」を備えており、カメラアングルやズーム、被写体の動きなどを細かく指定して映像を作ることが可能です。そのため、単にランダムな映像を作るだけでなく、既存のプロジェクトに継ぎ足せるような一貫性のあるカットやBロール映像を生成する用途にも適しています。

現時点で生成できる動画はフルHD(1080p)・5秒程度と短いものですが、解像度4Kやより長尺の映像にも将来的に対応予定と発表されています。生成された動画はMP4形式などで書き出せるため、そのままAdobe Premiere ProやAfter Effectsに取り込んで編集することも可能です。Firefly自体がPhotoshopやPremiere Pro、Adobe ExpressなどCreative Cloud各アプリと統合されているため、AIでラフ素材を作ってから従来の編集ツールで仕上げるといった連携もスムーズに行えます。実際、Premiere ProにはFireflyの映像生成技術を応用した「生成拡張」機能が搭載されており、既存の動画クリップに数秒間の映像を付け足すといった編集も可能になっています。今後さらにAfter Effectsなど他の映像制作ツールとの連携が強化されれば、テキストでシーンを記述するだけでアニメーションやVFXの土台を作成するといったことも現実味を帯びてくるでしょう。

音声に関する新機能

2025年のアップデートでは、音声処理に関する機能強化も注目ポイントです。特に「音声翻訳」機能の登場により、動画や音声コンテンツの多言語展開が飛躍的に容易になりました。Fireflyの音声翻訳では、原音の話者の話し方をできる限り保ったまま、別の言語で吹き替え音声を生成します (Adobe FireflyにAI動画生成や翻訳/吹き替え機能 – PC Watch)。声質やトーン、話すテンポといった特徴を維持する技術により、まるで同じ人が別言語で話しているかのような自然な吹き替えが実現します。例えば、日本語で喋っている動画を英語やスペイン語に翻訳すると、オリジナルの話者の声に似た声色で各言語の音声が出力されるイメージです。

音声に関する新機能

この音声翻訳機能の精度向上と多言語対応の進展によって、クリエイターはワンクリックでコンテンツのグローバル対応が可能になりました。対応言語は当初20種類以上ですが、今後さらに拡大していくことが予想されます。Adobeによれば、この機能を活用することで従来は専門の翻訳・吹き替えサービスに依頼していた作業を大幅に削減でき、時間とコストの節約につながるとしています。実際、AIが忠実に吹き替えを行ってくれることで、動画制作者は各国語版コンテンツの制作に費やす労力を減らし、その分コンテンツの質を高めることに集中できるようになるでしょう。

今後の展望と進化の方向性

Adobe Fireflyは今回の大型アップデートで飛躍的な進化を遂げましたが、Adobeは今後もFireflyの機能強化とモデル改良を続けていくと予想されます。実際、Adobeは既にFireflyの有料プラン(StandardやPro)を開始しており、今後プロフェッショナル向けのPremiumプランも提供予定です。これはAdobeがFireflyを一過性の実験ではなく、長期的なプロダクトとして本腰を入れて育てていることの表れと言えるでしょう。直近では、動画生成モデルの4K対応やより長い動画の生成、対応言語の拡充などが公式に示唆されています。加えて、AdobeのAI倫理指針に沿った形で、生成コンテンツへの「コンテンツクレデンシャル(作成情報のメタデータ埋め込み)」の適用拡大や、ユーザーが独自のスタイルを反映できるカスタムモデルの提供などが進む可能性もあります。

一方で、生成AI分野における競争も激化しています。画像生成AIではMidjourneyやOpenAIのDALL·Eが先行して高品質な生成結果で話題をさらいました。Midjourneyは芸術的で緻密なビジュアル生成に定評があり、DALL·E 3は高度な文脈理解による的確な画像生成で注目されています。しかし、これらのサービスの多くは学習データの出自が不透明なため、生成物の商用利用時に版権リスクが残る点が指摘されています。その点、Adobe Fireflyは上述の通り学習データを厳選し、商用利用に適した出力を提供しているのが大きな強みです。また、現時点で画像生成に特化する競合に対し、Fireflyは画像だけでなく動画や音声、ベクター素材まで扱える包括的なプラットフォームへと発展しました。Adobeのクリエイティブツール群とネイティブに連携できる利便性も他にないメリットです。例えば、「テキストから画像」を生成するAIは他にもありますが、生成した画像をそのままPhotoshopで細部調整し、InDesignでレイアウトし、After Effectsでモーションを付ける…といった一連の作業を同一エコシステム内で完結できるのはFireflyならではでしょう。

今後、MidjourneyやDALL·Eがどのように進化するかは未知数ですが、Adobe Fireflyも負けずにモデル精度の向上や新機能の開発を続けていくはずです。Adobeの担当者は「これらは始まりに過ぎず、クリエイティブの可能性を押し広げるツールとしてFireflyが今後さらに発展していくことを期待している」と述べています 。生成AIがもたらす制作ワークフローの変革は始まったばかりです。Adobe Fireflyはその先頭に立ちながら、クリエイターが安心して使えるAIツールとして今後も進化を続けていくでしょう。

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この記事を書いた人

CG&生成AIデザイナー
主にAdobeのアプリを使ってます。
Adobe Express、Firefly、Illustrator、Photoshop、Premiere pro

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