
「ジブリ風」画像の流行に違和感を覚えませんでしたか?
「まるでジブリ作品のような情景」「有名作家そっくりのイラストが一瞬で」──
SNS上を賑わせた、生成AIによる美麗な画像たち。その技術力に驚きつつも、どこか釈然としない違和感を覚えたクリエイターも多いはずです。
その「モヤモヤ」が現実の問題として表面化したのが、大規模な集団訴訟。MidjourneyをはじめとするAIサービスを対象としたこの動きは、ディズニー(The Walt Disney Company)やユニバーサル(Universal Pictures)といった巨大企業も巻き込みながら、クリエイティブ業界全体に深い影響を及ぼしつつあります。
本記事では、「生成AIと著作権」を巡る訴訟の最新動向とその本質、そして私たちクリエイターが直面するリスクと自衛策について、分かりやすく整理して解説します。
著作権訴訟の争点:AI生成は創作か、侵害か?
現在、複数のアーティストがAI開発企業を相手取り、米国で訴訟を起こしています。主な争点は以下の2点です。

① 学習データの問題:「無断学習」はフェアユースか?
- アーティスト側の主張:
著作権者の許可なくネット上の画像を収集・学習する行為は、大規模な著作権侵害である。 - AI企業側の主張:
学習は人間の模倣と同様であり、「フェアユース」の範囲内。直接の複製ではない。
👉 フェアユース(Fair Use)とは?
米国著作権法で定められた「著作物の一部を、一定の条件下で無許可で使用しても著作権侵害としない」という考え方です。報道、批評、教育、研究などの目的で、著作物を限定的に利用する行為がこれに該当します。しかしAIの学習行為がこれに当てはまるかどうかは、現在のところ明確な結論が出ていません。
② 生成画像の問題:作風の模倣は「二次的著作物」か?
- アーティスト側の主張:
「〇〇風」といった指示により、特定作家の画風を模倣した画像が生成されることは著作権侵害にあたる。 - AI企業側の主張:
生成画像は学習結果の再構成であり、原作の複製ではない。
クリエイターに迫る、2つの著作権リスク
生成AIを利用するクリエイターは、作る側と作られる側の両面でリスクにさらされています。
1. 作る側のリスク:知らずに著作権侵害の加害者に?
- 生成画像に既存キャラクターや作風が偶然反映される
- 「〇〇風」のプロンプトが著作権者の権利を侵害とみなされる
→ 商用利用や納品物に含めた場合、損害賠償を求められる可能性も。
2. 作られる側のリスク:自分の作品が無断で学習される
- 自作品が勝手に学習データに使われ、模倣される
- 作風やキャラクターが、安価に大量生産される危険性
→ 表現者としての信用・経済的価値が揺らぐ深刻な問題です。
私たちにできる対策:今すぐ始められる著作権リスクへの備え

1. 安全なツール選び:学習データの透明性をチェック
サービス | 学習データの特徴 | 安全性の評価 |
---|---|---|
Adobe Firefly | Adobe Stock、オープンライセンス、パブリックドメインのみを学習。 | 高評価:商用利用でも安心。クライアント提案にも適す。 |
Googleの生成AI(Imagen) | 著作権配慮を表明。著名人画像生成の制限などあり。 | 中評価:配慮はあるが学習元は不透明。規約確認必須。 |
Midjourney / Stable Diffusion | インターネット上の画像を広く収集。訴訟の対象になる可能性あり? | 低評価:パブリックな使用や商用化には注意が必要。 |
OpenAI(Image GPT) | スタイル模倣OKの姿勢。ただし裁判次第で方針変化の可能性あり? | 要注視:最新動向を継続チェック。 |
🔸 結論:クライアントワークでは、Adobe Fireflyが現時点で最も安全。
2. クライアントとの合意形成:説明責任と信頼構築
生成AIを利用する際は、
- なぜそのツールを選ぶのか
- どのような著作権リスクがあるか
をしっかり説明し、クライアントと合意を得ることがトラブル回避に直結します。
3. 自分の作品を守る:今できる自衛策
自分のイラストやデザインがAIに無断で学習されないように、以下の対策が有効です。
- Glaze(グレーズ) / Nightshade(ナイトシェード) を使う
シカゴ大学が開発した無料ツールで、画像に人間には見えない「ノイズ」を加えることでAIの学習や模倣を困難にします。 - Webサイトに学習拒否タグを追加する
自分のサイトにnoai
やnoimageai
というmetaタグを追加し、「AIによる学習を許可しない」という意思を示すことができます。
※すべてのAIクローラーがこれを守る保証はありませんが、重要な意思表示となります。 - 画像に著作権表示や透かしを加える
画像に「© 作成者名」や「Do not use for AI training」といった透かしテキストを入れることも抑止効果があります。
今後の行方:裁判はルール形成の始まりにすぎない
この訴訟の結果が、AIと著作権の今後を大きく左右するのは間違いありません。
各サービスもすでに、ルール変更を見越した仕様の見直しや規約改定を進めています。
そして、このルール作りの主役であるべきなのが、私たちクリエイターです。
技術と共に進むために、知性と倫理観を持とう

生成AIと著作権は、未解決の問いに満ちたテーマです。
しかし、だからこそ学び続け、声を上げ続けることが大切です。
- 正しい知識で自分と作品を守る
- クライアントに専門的な見解を示す
- 先人の創作物に敬意を払う
──これらの姿勢こそが、私たちにとっての羅針盤となります。
より良いクリエイティブの未来のために。技術と共に生きるために。
いま、私たち自身が「創る責任」を見つめ直す時が来ています。
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