
グロンギ語 翻訳アプリ
2025年、特撮ファンにとって忘れられない作品、平成ライダーの記念すべき第一作『仮面ライダークウガ』が放送25周年を迎えました。その重厚な作風とリアリティのある描写は、今なお「伝説」として語り継がれています。全国で「超クウガ展」も開催されるなど、その人気は衰えを知りません。
ファンの心を掴んで離さない魅力の一つが、敵である「グロンギ族」が話す独自の架空言語「グロンギ語」です。単なる雰囲気づくりの音声ではなく、日本語を一定の法則で変換したこの言語は、作品のリアリティを一層深めていました。聞くたびに「これ、どういう意味なんだ…?」と気になった方も多いのではないでしょうか。
そんな長年の好奇心から、私はふと、現代の魔法とも言える技術に思い至ります。「このグロンギ語、AIで翻訳できるんじゃないか?」と。
この記事は、プログラミング知識がほとんどない私が、ChatGPTをはじめとする生成AIを駆使して「グロンギ語翻訳アプリ」の開発に挑んだ、試行錯誤の記録です。
この記事を読めば、以下のことが分かります。
- ChatGPTとGemini、それぞれのAIの特性
- 同じ機能でも有料版と無料版で違いがあるという事実
- コードが書けなくても「好き」を原動力にアイデアを形にする方法
「AIで何か面白いことをしてみたい」と考えているすべてのクリエイターの皆さん、ぜひ最後までお付き合いください。
グロンギ語の法則をGeminiの超高精度「Deep Research」
まず私が試したのは、Geminiにグロンギ語の法則性をリサーチさせることでした。ファンサイトや有志による解説記事は存在するものの、情報はネットの海に断片的に散らばっている状態。自力でまとめるには途方もない時間がかかります。まずは、翻訳の「設計図」となるルールを正確に定義する必要がありました。
プロンプト: 「仮面ライダークウガのグロンギ語の法則を教えてください」


出力された結果は、単なるルールの箇条書きではありません。それは、言語学者が分析したかのような、一つの完成されたインタラクティブ・レポートでした。
するとGeminiは、各サイトの情報を瞬時に横断・分析し、素人目には複雑怪奇にしか見えなかったグロンギ語の核心的なルールを、以下のように見事に整理してくれたのです。
- 基本ルール: 五十音を別の行の音に置き換える(例:「あ」行→「が」行、「か」行→「ば」行)
- 助詞のルール: 「は」「が」「の」などの助詞は、特定の単音に変換される。
- 数字のルール: グロンギ語は九進法で数を数える。
- 最重要単語:翻訳されない言葉たちこれらの言葉はグロンギの世界観の核であり、換字されずにそのまま使われる。
- クウガ (Kuuga): 宿敵である古代の戦士。
- リント (Rinto): 狩りの対象である人類。
- ゲゲル (Gegeru): 彼らの行う神聖な殺人ゲーム。
- グロンギ (Gurongi): 彼ら自身の種族名。
このリサーチ能力と情報整理の正確さは、まさにGeminiの真骨頂です。
プロンプト: 「このルールに基づいてWordPressで使える翻訳アプリのカスタムHTMLコードを書いて。」

Geminiが生成したコードをブログに貼り付けたものの…動きません。単独のHtmlファイルにすれば動くのですが、Wordpressにコードを埋め込むんでプレビューしても動作しないのです。
特定の環境(今回はWordpress内)で完璧に動作する複雑なコードを一発で生成するのは、まだ少し苦手な部分があるのかもしれません。
それならChatGPT!自然言語の会話で生まれるコード
ここでLLMをChatGPTに変更します。
プロンプト:「WordPressのカスタムHTMLにコードを貼りましたが動作しません修正してください」
以下にHTMLコードを貼り付けて実行します。
以下の返答が返ってました。

ChatGPTが最初に提示したコードは、驚いたことに最初から動きました。しかし、翻訳結果は誤訳だらけ。ですが、ここからがChatGPTの真価でした。まるで人間と対話するように、具体的な指示を出すことで、コードは洗練されました。
プロンプト:「動作はするのですが翻訳内容が間違っています。資料を参照して修正してください。」
情報を強化するためにコードだけでなく、Geminiが整理してくれた「グロンギ語のルール」をGoogleドキュメントに出力して渡しChatGPT側で取り込み、改めて翻訳アプリのコード生成を依頼。

プロンプト:「上記の変更で、翻訳結果が 表1 の行置換と 表2 の助詞ルールに忠実になります。再度ご確認ください。」

プロンプト:「まだ誤訳がでます、わかりやすいデータがあるので参照してください。特に数字や翻訳されない言葉たちには注意してください。」

プロンプト:「4つの固有名詞が誤訳になる問題を解決して。クウガ リント ゲゲル グロンギ→間違いW Wババン Wドズズ Wズヂジ 正解 クウガ リント ゲゲル グロンギ」



まさに「壁打ち」です。このトライ&エラーの繰り返しによって、専門的なコードの知識がない私でも、最終的に思い描いた通りのアプリを完成させることができたのです。
完成!グロンギ語翻訳アプリ
そして、数えきれないほどの「壁打ち」の末に完成したのが、このアプリです。自分の手で(正確にはAIとの共同作業で)生み出したアプリが、初めて意図通りに動きました。
この記事冒頭のアプリがそれです。
この記事を読んでいるクリエイターのあなたも、きっと何か「大好き」なものがあるはずです。その情熱とAIを組み合わせれば、誰も見たことのないような、あなただけの新しい作品を生み出せるかもしれません。
さあ、あなたの「好き」が、最高のAI活用スキルになる時代です。
衝撃の事実!実はもっと簡単に作れたGeminiのWebアプリ機能
ChatGPTとの地道な作業でアプリが形になった後、私は衝撃の事実を知ります。Geminiには、リサーチ結果からワンクリックでWebページを自動生成する機能が存在したのです。
試してみると、本当に一瞬で、洗練されたデザインの解説ページが生成されました。しかも、驚くべきことに最初から「グロンギ語翻訳機能」まで実装されていたのです。
「遠回りしてしまったのか…?」

有料・無料の壁
しかし、その自動生成されたページを詳しく検証すると、新たな課題が見えてきました。
この機能は回数制限付きで無料版でも利用できます。しかし、Deep Researchのプロセスを比較すると、有料版が30以上のソースを参考にしているのに対し、無料版は8つと、参照する情報量が1/3以下でした。
この差は、生成物の品質に直結します。無料版が生成したページは、インフォグラフィックが簡素なだけでなく、核心である翻訳機能に誤訳が多く見られたのです。
結局のところ、ChatGPTと対話を重ねて手動で修正したアプリの方が、精度は格段に上でした。
AIはアイデア次第で最高の創作ツールになる
今回の挑戦を通じて、私は3つの重要なことを学びました。
- AIには相性や特性がある。使い分けが重要。広範なリサーチや情報の体系化は、複数の情報源を比較検討する能力に長けたGemini(特にDeepResearch機能)が適任です。一方で、対話を通じてインタラクティブにコードを生成・修正していく作業はChatGPTに軍配が上がりました。(もちろん、Claudeなども同様に優れているでしょう)。まるで、優秀なリサーチャーと、腕利きのペアプログラマーをチームに迎えたような感覚。目的に応じてAIを使い分けることで、アウトプットの質は格段に上がります。
- コードが書けなくても、アプリは作れる時代になった。もちろん、基本的なHTMLの知識や、「どういう指示を出せばAIが理解しやすいか」といったコミュニケーションの勘所は必要です。しかし、専門的なプログラミング技術の習得に膨大な時間を費やすことなく、自然言語での対話を通じてアイデアを形にできる時代が来ています。これは、クリエイターが技術的な制約から解放され、本来の「創造」というコア業務に集中できるようになったことを意味します。
- ユニークなアイデアの源泉は、技術じゃない。「熱量」だ。 今回、私がAIでアプリを作れた最大の原動力は、「仮面ライダーが好き」という、ただそれだけの熱量でした。「あの謎の言語を翻訳したい!」という純粋な好奇心が、AIというツールをどう使えば面白いことができるか、という具体的な発想につながったのです。どんなに優れたAIも、最初の「問い」がなければ動きません。その「問い」を生み出すのは、いつだって人間の情熱です。
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